YANO'S BLOG
ヨーロッパにも子供部屋はあった!ドイツ在住の方からのメッセージ
2019.08.28 子供の住環境 子育て
 
ヨーロッパ、特にフランスあたりでは「子供は生まれながらにして動物で人として育て上げる」という風習が強く、「生まれながらにして一人の人間」として育てるピューリタン思想を中心としたアメリカで、「子供部屋」の基本が出来上がったという話でした。
 
この記事に対して、読者の方から興味深いメッセージをいただきました。
ドイツ在住の女性の方ですが、メッセージの内容を掲載してもいいということで、実際のドイツの子供部屋の実情を通じて見えて来ることがたくさんあるので、まずはいただいた文章を掲載します。
 

ドイツ在住の女性の方からのメッセージ

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ヨーロッパには子供部屋がないという記事に、現地在住の、子育て真っただ中(娘13歳)の私の見解をお知らせしたく、メールさせていただきました。
 
私が娘をドイツで出産したのが、約14年前になりますが、当時から、すでに子ども部屋の個室を持つ家庭がほとんどでした。
 
それは、両親の時間を大切にするためと、子供が自分の部屋で自分で寝ることを習慣づける(自立させる)、という意味がありました。
 
当時、私は慣れない海外生活で、元夫(ドイツ人)の仕事の関係から、ほぼワンオペ育児だったのですが、日中にドイツ語学校へ行かなければいけず、6か月の娘を早くベッドに入れて、夜にドイツ語の勉強をする必要がありました。
 
 
その時に、ドイツ人の著者が書いた「赤ちゃんがすやすや眠るネンネトレーニング」という本があり、ベッドにおいて泣いてもすぐに抱っこしない、とか、泣いても寝るまで待つ、といったトレーニング方法を行っていました。話を聞くと、日本人以外の多くの家庭では、子供は子供部屋(赤ちゃんも)に寝かしつける、という方法でした。
 
 
子どもの人数や、家庭の経済状況、時代背景や、旧東ドイツと西ドイツなどの、地域の違いはあるかもしれませんが、当時私の住んでいたミュンヘンも(諸々あって、昨年からまたミュンヘン近郊在住です)、娘の祖父母の住むドイツ最南部でも、それから、過去6年のドイツの田舎暮らしでも、現都会近郊暮らしでも、私の周りの子どものいる全てのドイツ人家庭では、子ども部屋があり、子供がそこで寝起きし、遊んでいます。(家庭にもより多少差があるかとは思いますが)
 
 
勉強は、皆がする食事テーブルで、という方が多いです。
我が家の場合は、私がシングルマザー家庭なのですが、リビングに一番近い部屋を子供部屋にし、昔は、リビングのワーキングプレイスと子ども部屋のドアを開けはなして、お互いの存在を感じるようにしていました。
 
今は、宿題は学校で終わらせる校風の学校を選択したので、リビングにある私の仕事机の横に、スタッフさんの働く机を並べて、夜に娘が何か作業や、ちょっとした勉強や調べものをするときは、隣に座って、私とおしゃべりしながら、やっています。
 
また、住宅事情や家庭の経済状況にもよりますが、ゲストルームを持つ家庭も多々あります。ゲスト(祖父母や友人やお客さんなど)が泊まれる専用のゲストルームには、シャワーやトイレもゲスト用として、別についていたりしていました。
 
これは、経済的に余裕のある人が多かったからもしれませんが、知り合ったドイツ人家庭は、きちんとしたおもてなしをする家庭が多かったです。
(余談ですが、私はニュージーランドに語学留学していたのですが、その時のホストファミリーや友人のホストファミリーは全員、こういうゲストルームを持つ一軒家のお宅でした。そもそもそういう部屋がないと、留学生を受け入れることができませんが。。)
 
 
ただ、ドイツの話に戻ると、子だくさん(5人以上)家庭が好んで選択する、田舎の元農家(酪農)の家の作りだと、外部からたくさんの農作業をするワーカーと一緒に食事をする関係から、キッチンダイニングがものすごく広くて(10人は余裕で過ごせる)、リビングもそれなりに広いところが多かったです。
 
 
農家さんだと、短期のワーカーたちの寝泊りする場所を確保するためにも、リビングにベッドを置いていて、それがそのまま小さい子供が使う、という流れになることもあったかもしれません。
 
 
どちらにしても、ライフスタイルや職業、地域によって、家の作りに相違はあるかとは思いますが、(例えば、ベルリンは工場施設を改築してアパートにしているところが多く、部屋の天井がものすごく高い、というのも聞きます)おこがましくも、ドイツ情報をお知らせしたく、メールさせていただいた次第です。
 
 
また、お隣フランス事情はあまり知らないのですが、ドイツ以上に、夫婦の時間を大切にする、というのはよく聞く話なので、
(子供が小さくても、ベビーシッターに預けて、夜に夫婦でデートへ行く、というのは普通のことです。)恐らく、子供部屋という個室を与えているかとは思います。
 
 
家の作りについては、とても興味がある分野ですので、
八納さんのメルマガは、子育て世代の私にもとても勉強になります。
 
 
今後もご活躍を期待しております!
失礼かとは思いましたが、ご参考になれば幸いです。
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W様、感想ありがとうございました。
いただいた情報からいつくかのポイントが見えてきますね。
 
・2000年の時点でドイツの家庭のほとんどで子供部屋があった
・自立を促すためにわが子を自分の部屋で寝かしづける風習があった
・Wさんのご家庭では、学校の宿題を学校で終わらせる校風だった
・そんな中、家で少し作業するときは、お嬢さんはリビングで母親のそばで作業をやっている
・ドイツ人家庭は、きちんとおもてなしする家庭が多い
・ドイツの多くの家で、ゲストルームを持っていた
・ドイツの田舎の農家住宅では、ワーカーの人たちが集える場所としてLDKも広かった
・お隣のフランスでは、ドイツ以上に夫婦の時間を大切にしている
 
とても興味深いですね!
 

私が発信した情報と重ね合わせて考えると・・・

「ピューリタン思想」が広がっているエリアでは、「生まれながらにして一人の人間」として、個室を持たせて、そこで自立を促すように一人で寝かしつけるという風習があるということ。
 
勉強は、基本的に親のそばで行い、部屋に一人でこもって勉強するという雰囲気ではないこと。多くの家庭で、サロンやゲストルームのようにきちんともてなす家庭が多いこと。夫婦の時間を大切にする傾向があるなど、とても貴重な実情の話を伺えました。
 
私が書いた「ヨーロッパに子供部屋がない」という話は、20世紀後半までの風習で、その後劇的に世界的に子供部屋が普及して行ったので、その背景が分かりづらいところがありますが、子供部屋には、アメリカ式、ヨーロッパ式、日本式があると捉えてもらっていいでしょう。
 
アメリカ式、ヨーロッパ式、日本式についてはまた別の機会にお伝えします。
またWさんのような貴重なご意見もお待ちしています!
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この記事の著者
八納客創(やのけいぞう)
一級建築士 G Proportion Architects 代表。
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求している1級建築士。「孫の代に誇れる建築環境を作り続ける」をビジョンに、デザイン性と省エネ性、快適性を追求する一般建築を、そして住宅設計では「笑顔が溢れる住環境の提供」をコンセプトをもとに、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。