YANO'S BLOG
日本の住宅の高断熱化がどれくらい世界から遅れているかを知ると愕然とするでしょう
2019.07.24 弊社の建築に対する考え方 省エネについて 省エネ(エコハウス)
住宅業界において「高気密高断熱」という言葉や省エネ住宅、エコハウスなど一般の人から見たらどの表現がどういう意味を指しているのかとても分かりにくいと思います。
 
今回から、いわゆる省エネ住宅と言われているものの内容をわかりやすくお伝えしたいと思います。
 
まず、高気密高断熱住宅、省エネ住宅、エコハウスなどどれもが「光熱費を少しでも使わず、地球に優しい住宅」を示しているのは間違いありません。
 
ただ、これらを見てもどの程度の省エネ化を図ったものかわかりずらいと思います。
 
では、どうやって見分ければいいのでしょうか?
 
少し難しくなりますが、家の中からどれくらい熱が外に逃げやすいか?という数字があります。
それを熱損失係数Q値と言っていました。近年はQ値の代わりに外皮平均熱貫流率UA値というものを使うようになりましたが、まだ業界的にはQ値の方が話が通っているでしょう。
 
それが、住んでいる地域によって求められている数字が違ってきます。この数字は小さければ小さいほど、断熱の性能が高いことを示しています。
 
ざっとですが下記の表をご覧ください。

 
上の表が平成11年省エネ基準、下が平成25年省エネ基準と言われていますが、多分これを見るだけでややこしく感じるでしょう。11年→25年は基本的には、Q値からUA値に表記が変わったと捉えるぐらいで大丈夫です。(詳細にいうと1次消費エネルギーなども求めるようになったなどありますが、ここでは割愛)
 
先ほども言いましたが、Q値を示している上の表で感覚を掴んでもらっても大丈夫です。
上の表で行くと北海道のような一番寒いエリアは地域区分がⅠで、Q値はⅠ.6以下にしましょう、というふうになります。それに対して、東京や太平洋側沿岸は、地域区分がⅣなので、Q値は2.7以下にしましょうと見ることができます。
 
では、平成11年省エネ基準の基準ってどれくらいの性能なのでしょうか?
興味深い表がありますので、これをご覧ください。
 
 
実は、この表のように、S55年、H4年、H11年と基準値が上がってきているのがわかると思います。
 
これは地域区分Ⅳでの比較ですが、Q値も5.2→4.2→2.7と変化してきています。
天井に入れている断熱材の厚みも40→85→180と大きく変わってきています。
 
この表を見ると「H11年基準は随分とよくなったな〜」と思われるでしょう。
確かに、日本の中では飛躍的に良くなってきたようにみえます。
 
しかし、下記の表をご覧ください。
縦軸がQ値です。Ⅳという気候区分における各国のデータを見てください。
日本はH11年基準で、2.7なのに対してアメリカは2〜3、フランスは2ぐらいです。
 
アメリカと比較すると、部分的に勝っているようにみえますよね。
そうなのですが、両国と日本の間に大きな違いがあります。
 
それは、アメリカやフランスはこの基準が、義務基準なのに対して、日本は推奨基準なのです。
2019年の時点で、日本の省エネの義務基準はH4年のQ値4.2なのです。
 
義務基準レベルで見ると日本はフランスの半分の性能しか有していません。
 
これ見てどう思いますか?
そんな中、日本でも「2020年にH11年基準を義務基準にしよう」という話になっていました。
しかし、それが2019年になって頓挫したのです。
 
具体的にいうと、H 11年基準の断熱性能を保有した方がいい家になりますという感じの説明をすることを義務付けられたのです。
 
説明の義務。。。
 
省エネ先進国に比べて日本がどれくらい遅れているのかがこれで少しでも理解されたと思います。
単に、こう気密高断熱、省エネ住宅、エコハウスという言葉を並べるだけでは意味がないことが分かってくるでしょう。
家と家族の幸せとは
どのように関係があるのか?
特別無料PDFプレゼント
100軒異常の注文住宅の設計を通して
数多くの成功と失敗を見て来た建築士が、
「失敗しない家づくりのヒント」を解説した
無料PDFをプレゼントいたします。
この記事の著者
八納客創(やのけいぞう)
一級建築士 G Proportion Architects 代表。
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求している1級建築士。「孫の代に誇れる建築環境を作り続ける」をビジョンに、デザイン性と省エネ性、快適性を追求する一般建築を、そして住宅設計では「笑顔が溢れる住環境の提供」をコンセプトをもとに、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。