YANO'S BLOG
誰もが知っておきたい窓の知識 劇的に変わった6つのこと
2019.08.09 弊社の建築に対する考え方 省エネについて 省エネ(エコハウス)
 
今回はすぐ対処できる方法とは少し違いますが、可能であれば取り組んだほうがいいこと、家づくりを考えるのなら必須である「窓」についてお伝えします。
 
サッシと業界ではよく言いますが、「窓」と言った方が一般の方には伝わりやすいようです。窓というのは、窓枠と枠の中にあるガラスで構成されているのは、今の住まいについている窓を見れば分かるでしょう。
 
この10年ぐらいでこの「窓」は、劇的に変化してきました。
どのように変化してきたのかを5つの内容で伝えします。
 

変化1 アルミ枠から樹脂枠へ

日本の家の窓といえば、アルミ枠でした。しかし、最近は外部がアルミで部屋内側の内部が樹脂でできた「アルミ樹脂複合サッシ」や内外部とも樹脂でできた「オール樹脂サッシ」なども誕生しています。
 
実は省エネ先進国では、住宅の窓枠といえば、「木製」か「樹脂」が通常です。アルミ枠を使うことはほとんどありません。アルミ枠は、省エネ先進国ではビルなどの一般建築に使われたり、木製の枠の外部側にアルミの枠を被せたものに使われる程度です。
 
ですから、日本以外の省エネ先進国から見たら「なぜビルに使うアルミ枠を家の窓に使うの?」という「?」マークで日本の窓をみていました。
 
実際に、樹脂枠の方が断熱性能が高いです。しかし、多くの日本人が「でも樹脂だとしたら火事になったらすぐに溶けるのでは?」と思うのではないでしょうか?
 
実は、窓枠で使う樹脂は、プラモデルなどのプラスチックとは全然違うもので、樹脂はアルミよりも融点が高いのです。
 
ちなみに融点とは、固形化している物質が溶け出す温度のことを言います。日本では、たまたまアルミ枠の窓が20世紀後半に広がったため、それが普及してしまったのです。
 
しかし、断熱性能に劣るアルミ枠よりも樹脂枠の方がいいと認識し始められたのは、2010年をすぎてからこの数年です。もちろん日本にもエクセルシャノンなどの樹脂枠の老舗メーカーもありましたが、現在は各種メーカーもこぞって樹脂枠に取り組み、窓枠の性能がグンと良くなったのです。
 

変化2 ガラスが1枚から2〜3枚の組み合わせへ

窓枠の中に納まっているガラスは、今から20年ぐらい前までは一枚だけ入ったシングルガラスが普通でした。しかし、21世紀に入った頃からガラスを2枚入れたペアガラスというものが普及し始めました。
 
「なぜ、ガラスが1枚のものと2枚のもので断熱性能が変わるの?」と思う人もいるでしょう。
 
実は、2枚のガラスの間に、6mm〜12mm程度の空間を設けて、その空間の空気にガスを入れたり、その間を真空にしたりと、1枚ガラスとは比べものにならないくらいの断熱性能を出すことができるようになりました。
 
そして近年では3枚のガラスの間に空間を設けた「トリプルガラス」というものも出ています。
 
トリプルガラスはさらに断熱性能が上がりますが、2つほど難点があります。それは窓が重たくなりすぎる可能性があることと、必要以上に太陽熱を遮る可能性があるため、真冬に太陽光を家の中に入れたい場合、熱量が足らなくなる可能性がある点です。
 
しかし、省エネのことを熟知して使い勝手のことを把握している設計者なら問題なく適材適所で使いこなすでしょう。一般の人が、トリプルガラスのことを使い熟すのは難しいので、省エネに詳しい設計者などに相談するのがベターです。
 

変化3 熱を反射する 熱を取り入れる加工が!

昔のガラスは、単に光や熱を家の中に透過するだけのものが殆どでした。それが、車のガラスにフィルムを貼るように、太陽光や太陽熱を遮るコーティング技術などが普及し、今の住宅用の窓ガラスにも施されるようになりました。
 
その代表的なものが「LOWーEガラス」というもので、太陽熱とより遮りながら家の中の熱を逃がさない遮熱仕様のものと、太陽光を程よく入れながら家の中の熱を逃がさない断熱仕様のものがあります。
 
例えば、冬の日差しを入れて家の中を温めたい場合は、庇がついた南側の窓であれば、断熱仕様が向いています。逆に、東西にある窓は、太陽熱が夏場家の中の温度を一気に高めてしまう可能性があるので、遮熱タイプが向いています。
 

変化4 隙間のない構造へ

台風などになると「ピューーーー!」という音が窓からすることが昔は多くありました。それは、窓に隙間があり、風が強くなるとその隙間がより大きくあいて、そのような音をならしていました。
 
もちろん、風の強さのこともありますが、以前の窓は隙間がある窓が多く、例えば「ジャロジー」というガラスがルーバーで出来た窓は、内外部の気密性を全く保てない窓の代表格です。
 
しかし、この10年ぐらいで隙間のない気密性の高い窓がどんどん増えました。そうすることで、窓の隙間から冷気が入ってくるということも随分と減ったのです。ただし、現在でも窓の種類によって、気密性能が違います。具体的には引き違い窓は気密性能が低めで、滑り出し窓、開き窓関係は気密性能が高いです。
 
ですので、気密性能の高い家を作ろうとする場合は「引き違い窓」の使用を極力減らすことが重要になります。弊社の実績ですが引き違い窓の多い家と少ない家では、気密性能C値が0.3ぐらい変わります。
 
 

変化5 先進国最下位からトップの仲間入りに!

2010年ごろは、日本の窓は省エネ先進国の中でもダントツに最下位でした。例えば、窓の断熱性能を表すU値(数字が小さい方が断熱性能がいい)が日本で最高に高いもので2.9W/m2・K 程度でした。
 
しかし、その頃の中国で建てられている窓の最低基準が2.5W/m2・Kでした。
 

2013年当時の資料。日本の窓の性能はとても低かったことが伺える

 
個人的に、環境整備が遅れていると思っていた中国よりも窓に関しては日本の方が遅れをとっていてショックを受けましたが、2019年現在では、日本でもU値が1.0を切るものや普及している樹脂サッシなどで1.2〜2.0ぐらいの製品もたくさん出るようになり、省エネ先進国の中でもトップの仲間入りを果たしました。
 
価格的にも、アルミ樹脂複合サッシと樹脂サッシの差が1割程度とかなりこなれてきていますので、樹脂サッシを使う人も増えてきています。
 

変化6 内窓の普及

以前の窓の性能が低いのをカバーするために窓の部屋側に「内窓」というものを取り付ける方法があります。例えば、朝直射日光が入ってきてとても暑い窓や真冬に冷気がどんどん入ってくる窓などの内側にこの「内窓」を設置すると随分と改善できます。
 
また窓の気密が取れていない場合も、内窓で気密を確保することも可能です。
 
ただし気をつけないといけないのは、古い家で壁の中にほとんど断熱材が入っていないような場合です。
 
これまで冬に、窓のガラスが結露して屋内の水分を吸い取ってくれていたのが、窓が結露しなくなった分、例えば北側の部屋の壁際においているタンスの後ろがびっしょりと濡れてカビだらけになる、場合によっては壁の中の構造材を腐らせることもあります。
 
このように安易に内窓をつけてはいけないケースもありますので、省エネに詳しい専門家にアドバイスをもらいながら設置箇所を検討してみましょう。
 
 
 
・・・・いかがだったでしょうか?
日本の窓はもともと断熱&気密性能がとても低かったのが、各メーカーも頑張り性能のいい窓がたくさん出るようになりました。
 
ただ、これは住宅用サッシの話で、一般建築の窓性能はまだ低いものが多くあり、また建築技術者の中でも一般建築に携わっている人で、窓に対する知識がまだまだ低い人もいるのが残念なところです。
 
私はこれからの時代は一般建築でもこの知識が広がればと思い、幼稚園、保育園などの施設設計に、どんどん高性能窓を取り入れて快適性を追求しています。知識の輪が広がればいいですね。
 

性能のいい住宅用サッシの最大寸法を活かして、窓のデザインを行なったすずらん保育園(呉市)

 
 
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この記事の著者
八納客創(やのけいぞう)
一級建築士 G Proportion Architects 代表。
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求している1級建築士。「孫の代に誇れる建築環境を作り続ける」をビジョンに、デザイン性と省エネ性、快適性を追求する一般建築を、そして住宅設計では「笑顔が溢れる住環境の提供」をコンセプトをもとに、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。